ブルボン — 島の名を持つ、甘さの系統
2026-07-06
ブルボン(Bourbon)はティピカと並ぶ、栽培アラビカのもう一つの大きな源流です。名の由来はインド洋に浮かぶブルボン島——現在のフランス領レユニオン島です。
別ルートで渡った系統
十八世紀初頭、フランス人がイエメンからブルボン島へコーヒーの苗を運びました。オランダ経由でジャワからカリブ海へ渡ったティピカとは、まったく別のルートです。島の環境で育つうちに、この系統は独自の性質を獲得していきました。
十九世紀半ば以降、宣教師や入植者の手でブルボンはアフリカ大陸や中南米へ広がります。特にブラジル、エルサルバドル、グアテマラ、ルワンダ、ブルンジといった産地では、今日でも主要品種として重要な位置を占めています。
収量と味の両立
ブルボンの最大の利点は、ティピカより二割から三割ほど収量が高いことです。樹形はより密に葉をつけ、枝の間隔も詰まっている。それでいてカップの評価も高い。甘さがしっかりと出て、酸は柔らかく丸みがあり、口当たりに厚みがあります。
生産性と品質を両立させたこの品種は、中南米のコーヒー産業を支える基盤になりました。ただしさび病への弱さはティピカと変わらず、この点が二十世紀後半の育種の大きな課題になっていきます。
色のバリエーションと、豊かな子孫
ブルボンには実の色による変異があります。一般的なレッドブルボンのほか、イエローブルボン、オレンジブルボンが知られています。イエローブルボンはブラジルで見つかった変異で、完熟しても赤くならないため収穫の見極めに経験を要しますが、甘さが際立つと評価されています。
ブルボンから派生した品種は数多くあります。ブラジルで見つかった矮性変異のカトゥーラ、エルサルバドルのパカス、コスタリカのビジャサルチ。いずれも樹高が低くなる変異で、密植と収穫効率の向上をもたらしました。ケニアのSL28にもブルボン系の遺伝的背景があるとされています。
系譜を辿ると、現代のスペシャルティコーヒーの相当部分がこの島の系統に行き着きます。地図上では見落としてしまうような小さな島が、世界のコーヒーの味を決めた——そういう話です。