ハニープロセス — 粘液質をどこまで残すか、という調整弁
2026-07-15

ハニープロセス(Honey Process)という名は、蜂蜜を使うという意味ではありません。粘液質を残したまま乾燥させる工程で、豆の表面がべたつき、蜂蜜をまとったように見えることに由来します。ブラジルではパルプドナチュラル(Pulped Natural)と呼ばれ、実質的に同じ手法を指します。
ウォッシュドとナチュラルの中間
工程はウォッシュドの途中まで同じです。パルパーで果肉を除去する。しかしそこで発酵槽に入れず、粘液質を残したまま乾燥に移ります。
つまりナチュラルの「果肉ごと乾かす」とウォッシュドの「粘液質を落として乾かす」の中間に位置します。果肉由来の甘さをある程度取り込みつつ、ナチュラルほど発酵のリスクを負わない。設計思想としては折衷案ですが、この折衷が非常に有効でした。
白・黄・赤・黒
ハニーには色による段階分けがあります。厳密な国際基準があるわけではありませんが、おおむね次のように理解されています。
ホワイトハニーは粘液質をほとんど落とし、短期間で乾燥させたもの。ウォッシュドに近いクリーンな仕上がりになります。イエローハニーは粘液質を半分程度残し、日照下で比較的早く乾かします。
レッドハニーは粘液質を多く残し、日陰を使って乾燥をゆっくり進めます。ブラックハニーは粘液質をほぼすべて残し、覆いをかけて最も長く乾燥させる。色が濃くなるほど果実感と甘さが増し、同時に管理の難易度も上がります。
コスタリカが広めた
この手法を体系化し世界に広めたのはコスタリカの生産者たちです。二〇〇〇年代、コーヒー価格の低迷を受けて、小規模生産者が自前の精製設備(マイクロミル)を持ち、差別化を図る動きが広がりました。ハニープロセスはその中心的な武器になりました。
水の使用量を減らせることも、環境負荷の観点から評価されています。
調整弁としての価値
ハニープロセスの本質は、生産者が味を「設計できる」点にあります。同じ豆から、粘液質の残し方と乾燥速度を変えるだけで、複数の異なるロットを作れる。
私たちがCư M'garのファインロブスタでハニーを選んでいるのは、ロブスタの持つカカオや黒糖のような甘さを引き出すのに、この方法が適していると判断したからです。ウォッシュドでは硬さが出やすく、ナチュラルでは発酵の要素が強く出すぎる。その中間にちょうどよい着地点がありました。



